昨年の夏、使用していたP701iDの液晶がついに壊れ、それならばと思い切って乗り換えたXperia X10(SO-01B)。 使い始めて1年経ったこともあり、少し纏めてみようと思う。
Androidとは
Xperia X10のOS、Androidは、Googleが開発・公開しているOSである。 Androidでは、各メーカが独自にカスタマイズしたものを、 キャリア向けにカスタマイズし販売、ユーザが購入する、というのが主流である。 Windowsならば、Microsoftがリリースし、各メーカがカスタマイズしたものを「メーカ製PC」 として販売するのが主流。
WindowsとAndroidの大きく異なる点は、間に介入する存在が多い点と、更新の方法が異なる点。 このため、Android開発元のGoogleがOSを更新してもすぐには反映されないどころか、 まったく反映されないことも多々ある。
Androidの更新を保証
そこで、18ヶ月間のupdateを保証するプログラムというものが発表されたことがあった。
GoogleとOEM各社、Android端末のアップデート保証プログラムを発表
http://japanese.engadget.com/2011/05/10/google-oem-android/
その結果か、Xperia X10のグローバルモデルにAndroid 2.3の更新が登場。 散々無いと言われ続けていたが、Sony Ericssonは出来る子だったようだ。
Android 2.3 for Xperia™ X10 is here
http://www.sonyericsson.com/update/?lc=en&cc=gb&pid=xperiax10
まさかの事態
しかし、これに水を差すとんでもない奴が居た。キャリアである。
Xperia(SO-01B)のAndroid 2.3アップデート見送りの理由が明らかに
http://gigazine.net/news/20110622_xperia_so_01b_not_gingerbread_reason/
これによると、更新を見送る理由は、
- Android 2.3モデルとして今年発表した「Xperia arc(SO-01C)」や「Xperia acro(SO-02C)」のようなパフォーマンスを発揮できない
- バージョンアップの際にユーザーデータを保持できず、必ず本体が初期化されてしまう
- データのバックアップアプリが無くなる
- カメラ撮影時の笑顔認識機能「スマイルシャッター」が無くなる
- 現行のAndroid 2.1版で提供している日本語フォント「モトヤフォント」が適用できなくなる
パフォーマンスを発揮できない? そりゃハードの性能が違うんだから当たり前だろう。 本体内蔵データが消える? Android Marketのアプリは仕方ないとしても、ユーザデータを本体に保存しているとか、 何のためにGoogleのOSを使っているのか。 そして最大の「わけがわからないよ」はフォント。 フォントを理由としてサポートする側がupdate見送る携帯端末用OSというのは聞いたことがない。
こうして更新が見送られるほんの少し前、キャリアであるドコモ側はこんな事を言っていたらしい。
「我々の使命は最新OSをお届けすることに加え、日本独自の機能を入れていくこと」、ドコモの山田社長がAndroidのバージョンアップについて言及 http://gigazine.net/news/20110516_docomo_android_version_up/
まったく、わけがわからないよ。
アップデート見送りの問題点
当然ながら、(一部の)SO-01Bユーザからは失望の声が上がり、グローバルモデルのファームウェアと OSをインストールする方も出てきている。だが、それはあくまで非公認のやり方であり、リスクは端末更新で データ消失するより遥かに大きい。 また、「2.3待ってんのなんてオタだけだよw そんなんめんどいし儲からないからキャリアがやらなくて当然じゃんw」 という意見も見受けられる。
だが、アップデートされるのは何も見た目の機能だけではない。セキュリティホールに対する更新も含めての更新なのである。つい最近も、Android 2.2以前にSSLにおける重大な脆弱性が判明したばかりだ。
JVN#43105011 Android における SSL 証明書の表示に関する脆弱性
http://jvn.jp/jp/JVN43105011/
PC向けのWindows等と違い、Androidはユーザ側がパッチを適用することはできない。root権限すら持てない。 既存の携帯電話、いわゆる「ガラケー」と違い、Androidはオープンでグローバルなものであり、 脆弱性もオープンかつグローバル。これまでの常識は通用しない。 Androidの更新を提供しないメーカ・キャリアは、OS更新を提供しないことに対するリスクを、 全てユーザ側に押し付けているということになる。
それでは不味いと一応思ったらしく、「ドコモ あんしんスキャン」なるウィルス対策ソフトウェアの無償提供を開始した。
スマートフォン向けウイルス対策サービス「ドコモ あんしんスキャン」を無料で提供開始
http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2011/06/22_01.html
しかし、こんなモノは気休めでしか無い。根本的に解決しなければならないものを、 小手先の工作で誤魔化しているようにしか見えない。OSの更新によるセキュリティホールへのパッチと ウィルス対策は両方必須、Windowsではよく言われていることである。古いAndroidを使い続けるのは、 ウィルス対策ソフトがあるからとMicrosoftによる更新サポートが切れたWindows 9xや2000を使い続けるようなものだ。
それに、"Android 2.3モデルとして今年発表した「Xperia arc(SO-01C)」や「Xperia acro(SO-02C)」 のようなパフォーマンスを発揮できない"などと言ったのだから、ウィルス対策ソフトを導入することによる 負荷増・パフォーマンスの低下も考慮していただきたい。
また、脆弱性情報に対して、Android 2.2以前を用いて製品を販売している国内企業からの反応が ほとんど無いというのも問題がある。("JVN#43105011"でググって出てくるのは1300件。そのうち殆どがtwitterやblog) 例えそのセキュリティホールが販売している端末に対して問題なかったとしても、「問題なかった」 という情報を公開しなければ、不安が募るだけだ。
何を言いたかったか
簡単に言うと、言い訳言ってないでさっさと公式で更新提供するか、 日本独自モデルなんて止めるか、更新打ち切った端末で2年縛りは止めるかしてね!ということだと思う。
いろいろ文句や愚痴を書いたが、AndroidやXperiaが嫌いな訳ではない。 サポートする筈のキャリア(ドコモ)が足を引っ張っている現状に怒っているのである。 update以外にも、Windowsのメーカ製PCを思い起こされる量、かつアンインストール不可なアプリケーションを 大量にプレインストールといった、Androidのメリットである自由さを損ねるようなやり方など、 キャリアのやり方に対する不満点は多く存在する。
ドコモスマートフォン for Businessには、「セキュリティも安心」と書いてある。 しかし、現状のような対応では、私は安心してドコモやその他国内キャリアのスマートフォンを利用することはできない。 情報が流出したり、壊されてからサポートされるのでは遅すぎるのである。
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